暗号理論とは、離散数学や計算理論、確率論などの数学を基に、情報セキュリティ技術を理論的なアプローチで開発・解析する学問です。
インターネットなどで安全に通信や情報処理を行うための必須の技術である、情報セキュリティと暗号技術に関する研究開発を行っています。現代の暗号技術は、素因数分解問題や離散対数問題などの計算困難問題に基づいて安全性を証明できるように設計されており、安全性を証明するための理論的な解析が必要となります。一方で暗号技術は、インターネットなどで実際に日々使用される技術であり、効率性や実用性も重要になります。これらの観点を踏まえて、情報セキュリティ特に公開鍵暗号技術と暗号プロトコルについて下記の研究開発を行っています。
現在使われている公開鍵暗号技術は量子計算機が実用化されると解読されてしまい使用できなくなります。このため、量子計算機でも解読できない耐量子計算機暗号技術の研究が始まっています。耐量子計算機暗号技術特に同種写像暗号とその応用について研究開発を行います。
キーワード: 同種写像暗号、格子暗号、多変数多項式暗号 など
従来の暗号技術に、何らかの付加的な機能を追加したもの高機能暗号と呼びます。匿名で電子署名を行える匿名署名などの高機能署名、暗号文から平文の関数値を計算することができる関数暗号、データベースを暗号化したまま検索を可能とする検索可能暗号など、高機能暗号技術の研究開発を行います。また、その基礎となる楕円曲線やペアリングの研究開発を行います。
キーワード: リング署名、グループ署名、IDベース暗号、関数暗号、検索可能暗号 など
秘密計算とは、複数の参加者が持つ秘密のデータを入力値とした関数計算を、入力値を秘匿したまま行うことを可能とする暗号技術です。データ分析とプライバシー保護を両立することを可能とする技術であり、非常に実用性の高い技術です。秘密計算の効率化や安全性の向上を目的とした研究開発を行います。
キーワード: 2パーティ/マルチパーティ計算、秘匿積集合計算 など
インターネットで広く用いられている鍵交換プロトコルTLSや、ビットコインなどで用いられている分散台帳技術ブロックチェーンなど、実際に使われている暗号技術について、安全性の評価や、それらを用いた応用プロトコルの研究開発を行います。また、暗号技術の安全性証明は数学的に人の手によって示されることが一般ですが、そこにはヒューマンエラーの可能性や多大な労力を要するという課題があります。安全性の証明・解析を計算機で自動化し、これらの課題を解決する技術(形式検証)の研究開発を行います。
キーワード: 認証プロトコル、公平交換、暗号通貨、暗号プロトコルの形式検証 など